LEP製剤(保険適用ピル)とは?

LEP製剤とは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という二つの女性ホルモンを合成させた「低用量ピル」のことです。
低用量ピルは、もともと女性が主体的に行うことができる「経口避妊薬(OC)」として1999年に開発されましたが、避妊以外にも、「生理痛が改善する」「経血量を抑える」「月経周期が整う」など、生理に関連するさまざまな効果(副効用)があることから、2008年に同じ成分の薬剤が「月経困難症」の治療薬として登場しました。
日本国内では、月経困難症の治療目的で使用される低用量ピルを、避妊用の低用量ピル(OC)と区別するために「LEP(LowdoseEstrogenProgestin:低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)」と呼んでいます。(以下、LEPと表記)
また、現在、「月経困難症」と「子宮内膜症」の治療に限り、保険適用が認められていることから、「保険ピル」と呼ばれることもあります。
保険適用ピル(LEP)による月経困難症(生理痛)・子宮内膜症の治療
女性の身体にとって、生理(月経)は切っても切り離せないものですが、成人女性の70~80%が生理痛を感じているというデータもあるように、毎月やってくる不快な症状にお悩みの方も少なくありません。
痛みの感じ方には個人差が大きく、生理時に重だるさや軽い痛みを感じる程度なら問題ありませんが、日常生活に支障をきたすような強い痛みは、「月経困難症」という病気であり、何らかの病気が隠れていることもあるため、なるべく早く診察を受けられることをおすすめします。
月経困難症は、鎮痛剤で痛みを一時的に抑えるだけでなく、「低用量ピル(LEP)」による治療が有効です。避妊薬というイメージが強い低用量ピルですが、女性ホルモンのバランスを整え、生理痛を改善する効果もあることから、現在では「月経困難症」や「子宮内膜症」の治療にも使われるようになっています。
適応疾患①:「月経困難症(生理痛)」
生理の直前または開始に伴い、下腹部の痛み(生理痛)や、腰痛、頭痛などが起こる病気で、吐き気やめまい、イライラ感、下痢などを伴うこともあります。
重症の場合、寝込んでしまうほどの強い痛みで日常生活に支障をきたすこともありますが、生理の後半もしくは終了とともに症状が消失または軽減するのが一般的です。
発症原因は?
月経困難症には、子宮やそのほか骨盤内に特別な異常がない「機能性月経困難症」と、何らかの病気によって起きる「器質性月経困難症」があり、それぞれ痛みの原因は異なります。
機能性月経困難症
生理時、子宮内膜から「プロスタグランジン」という痛み物質が大量に放出され、子宮を収縮させることで痛みが起こります。「原発性月経困難症」とも言われ、若い女性の70~80%の生理痛がこのタイプです。生理に関する不安や緊張感などの心理的なストレスにより、痛みが強くなることもあります。
器質性月経困難症
子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮後屈症、子宮奇形など、子宮の病気や異常が原因で痛みが起こります。「続発性月経困難症」とも言われ、30歳以上の発症が多く、年齢が上がるにつれ症状が悪化しやすいのが特徴です。
LEPによる月経困難症への効果
LEPには、排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑える効果があります。服用すると、生理時に出るプロスタグランジンの産生が減り、子宮の収縮運動が抑制されることで、生理痛が軽くなります。
また、生理痛がひどい若年層の女性は、将来、子宮内膜症になるリスクが高くなりますが、早期からLEPを服用していると、子宮内膜症の発症を予防する効果も期待できます。
適応疾患②:「子宮内膜症」
生理時に強い下腹部痛、腰痛などがあり、「過多月経(月経血が増える)」を伴うこともあります。悪化すると生理時以外も痛みが続き、性交痛、排便痛、排尿痛、不正出血などが起こるほか、不妊の原因になることも分かっています。
子宮内膜症は、生理のある女性の5~10%程度に発症すると言われており、20~30代の比較的若い女性に多いのが特徴です。
発症原因は?
本来、子宮の内側(内腔)にあるべき「子宮内膜」が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)にできて増殖する病気ですが、なぜ発症するかは分かっていません。
正常な子宮内膜は生理が来ると体外に排出されますが、子宮以外にできたものは排出できずに腹腔内に残ってしまい、炎症や痛み、癒着を引き起こします。
LEPによる月経困難症への効果
生理時の痛みや経血量を減らすほか、子宮内膜症によってできた卵巣内の「チョコレート嚢胞(のうほう)※」を小さくする効果が期待できます。
※チョコレート嚢胞とは、卵巣内の子宮内膜に似た病変が生理のたびに出血し、チョコレート状に固まって溜まったもので、しばしば破裂して急激な腹痛を起こすことがあります。
また、子宮内膜症は、生理を繰り返すうちに悪化していくため、LEPで生理をコントロールし、生理の来る回数を減らすことで進行を抑える効果も期待できます。さらに、子宮内膜症で手術を行った場合の再発率を下げる効果があることも分かっています。
LEP処方(保険適用)に必要な検査
生理時に強い下腹部痛、腰痛などがあり、「過多月経(月経血が増える)」を伴うこともあります。
悪化すると生理時以外も痛みが続き、性交痛、排便痛、排尿痛、不正出血などが起こるほか、不妊の原因になることも分かっています。
子宮内膜症は、生理のある女性の5~10%程度に発症すると言われており、20~30代の比較的若い女性に多いのが特徴です。

月経困難症
≪検査目的≫
月経困難症の痛みの原因となる病気の有無を調べる
≪検査内容≫
内診、視診、血液検査、超音波検査、画像検査(MRIなど)、腹腔鏡検査

子宮内膜症
≪検査目的≫
痛みや不妊の原因が子宮内膜症であるかを確認する
≪検査内容≫
内診、直腸診、血液検査、画像検査(MRIなど)、腹腔鏡検査
LEP処方(保険適用)の副作用について
LEPは、従来からある中用量ピルに比べると、副作用が少なく安全に使用できるように改良されていますが、患者様によってはまれに以下のような症状が出る場合もあります。
① マイナートラブル
ピルに含まれる黄体ホルモン(プロゲスチン)の副作用で、むくみや吐き気などの不快な症状が起きる場合があります。服用開始初期に多く見られ、継続するうちに体が薬剤に慣れて、気にならなくなることが多いです。しばらく続けても不快症状が無くならない時には、違う世代の薬剤に変更することで、症状が治まる場合もあります。
② 血栓症のリスク
ピルに含まれる卵胞ホルモン(エストロゲン)には、血液循環を悪くする作用があることから、「血栓症(血管の中に血の塊ができる)」の発症リスクが高まるという報告があります。
LEPに含まれるエストロゲン量は少量ですが、服用を開始した後、ふくらはぎのむくみや手足のしびれ、胸の痛み、動悸、息切れ、めまい、激しい頭痛など、普段とは違う症状が現れた場合は、服用を止め、すぐに医師にご相談ください。
また、LEPの服用中は、定期的に血液検査を行い、体調の変化がないかを確認します。内診、直腸診、血液検査、画像検査(MRIなど)、腹腔鏡検査
以下の条件や病気に当てはまる方は、原則、LEPの処方ができません
- 初潮前、50歳以上または閉経後
- 喫煙(35歳以上で1日15本以上)
- 重度の高血圧
- 糖尿病(血管病変を伴う場合)
- 妊娠中もしくは妊娠の可能性のある方
- 授乳中 ※産後6か月未満 それ以降は禁忌ではない
- 手術前後および長期の安静が必要な方
- 心疾患(重度の心臓弁膜症など)
- 肝臓疾患(重度の肝障害、肝腫瘍など)
- 前兆を伴う片頭痛
- 乳がん
- 血栓症の兆候のある方(既往歴含む)
- 自己免疫疾患(抗リン脂質抗体症候群)
- 原因不明の不正出血
※その他、高度な肥満の方なども慎重に使用する必要があります。詳しい内容については医師にご確認ください。
保険適用ピル(LEP)に関するQ&A
ピルは、1日一回、服用します。何時に飲んでいただいても良いですが、毎日、同じ時間に飲むことが大切です。飲み忘れを防ぐため、ご自分のライフスタイルに合わせ、食事の前後や就寝前など、一番続けやすい時間に服用する習慣をつけましょう。
ピルは、1日一回、服用します。何時に飲んでいただいても良いですが、毎日、同じ時間に飲むことが大切です。飲み忘れを防ぐため、ご自分のライフスタイルに合わせ、食事の前後や就寝前など、一番続けやすい時間に服用する習慣をつけましょう。
LEPは、海外では避妊薬として認可を受けており、実際には妊娠を防ぐ効果もありますが、現在、日本では月経困難症、子宮内膜症の治療薬として認可されているため、避妊のみの目的で処方することはできません。
服用時に、むくみなどが起きると、溜まった水分で若干、体重が増える場合はありますが、ピルの中に含まれるホルモンの作用で太るということはありませんのでご安心ください。
最新のガイドラインによると、低用量ピルの使用と乳がん発症のリスクに相関性はないとされています。過度な心配は要りませんが、ご自身の状態を確認するためにも、定期的に乳がん検診を受けていただくようお願いします。月経困難症の治療のため、長年ルナベルを飲んでいましたが、先月、フリウェルに変更したところ、生理が重く、生理痛が悪化しました。しばらく飲み続けたほうが良いですか?フリウェルはルナベルのジェネリックなので成分自体は同じです。しかし、使用されたご本人が不調で、合わないと感じる時にはルナベルに戻されると良いでしょう。もし、ルナベルでも同じように症状が出るようならば子宮に何らかの問題が起こっているのかもしれませんので、なるべく早くに診察を受けるようにしてください。
LEP(保険適用ピル)の薬の種類

ルナベルLD
- 保険が効きます。
- 月経困難症の治療薬。
- 子宮内膜症等の痛みが強い方に対して有効です。
- 黄体ホルモンとして臨床的に長期使用経験のある第一世代ノルエチステロンを使用している。
- 内容は経口避妊薬のオーソと一緒です。

ルナベルULD
- 保険が効きます。
- 月経困難症の治療薬。
- 子宮内膜症等の痛みが強い方に対して有効です。
- 黄体ホルモンとして臨床的に長期使用経験のある第一世代ノルエチステロンを使用している。
- 内容は経口避妊薬のオーソと一緒です。
- 本邦で最低用量のエチニルエストラジオール含有製剤である。エストロゲンが少ないので、吐き気等の副作用が少ないです。
月経困難症を適応症とするルナベル配合錠は黄体ホルモンとして半世紀を超える使用実績のあるノルエチステロン(NET)、卵胞ホルモンとしてエチニルエストラジオール(EE)を含有するエストロゲン/プロゲスチン製剤です。
EE35μgを含有するルナベル配合錠LDよりもさらに安全性を高める事が期待できる製剤を開発する事は、月経困難症で苦しむ女性にとってより有益と考え、卵胞ホルモン由来の副作用を低減させるべく、EE含有を20μgまで減量した製剤の開発が2009年5月から開始されました。そして、2013年6月に月経困難症治療薬として「ルナベル配合錠ULD」が承認されました。

フリウェル配合錠LD
「フリウェル配合錠LD」は、「ルナベル配合錠LD」のジェネリック医薬品です。「ルナベル配合錠LD」と同じ、月経困難症の適応を持つ薬剤で、薬剤の特徴および目的は、ルナベル配合錠LDに準じたかたちになります。後発医薬品ですので、患者様の薬剤費の負担が安く抑えられるというメリットがあります。

フリウェル配合錠ULD
「フリウェル配合錠LD」は、「ルナベル配合錠LD」のジェネリック医薬品です。「ルナベル配合錠LD」と同じ、月経困難症の適応を持つ薬剤で、 薬剤の特徴および目的は、ルナベル配合錠LDに準じたかたちになります。 後発医薬品ですので、患者様の薬剤費の負担が安く抑えられるというメリットがあります。

ヤーズ
保険が効きます。月経困難症の治療薬。エストロゲンが一番少ないので吐き気や浮腫などの副作用が少ないです。ヤーズ(超低用量ピル)は子宮筋腫など器質性疾患の有無にかかわらず月経困難症の軽減目的で発売され、現在発売されている低用量ピルよりもエストロゲンの量がさらに少ない量となっています。海外では主に避妊薬として認可を受けており、避妊効果もあるのですが、日本ではそれを目的で使用できません。また、海外ではPMSやにきびの治療薬としても認可されています。

ヤーズフレックス
ヤーズフレックス配合錠は、国内で初めて連続服用が可能となったLEP製剤です。定期的な休薬期間(月経のような出血)がないため、休薬期間に多くみられるホルモン関連症状(骨盤痛、頭痛、腹部膨満感、乳房痛など)の減少が期待できるほか、自由に月経をコントロールすることができます。
ルナベル・フリウェルとヤーズの違いについて
ルナベル・フリウェルは子宮内膜症に伴う月経困難症および機能性月経困難症の治療薬です。 月経に伴う疼痛を改善され子宮内膜症性のう胞の縮小と、子宮内膜症の血液マーカー(CA125)の低下が認められています。
ルナベル・フリウェルはの内容はOC(低用量ピル)『オーソ』と全く同じ成分なので、エストロゲンの量は『ヤーズ』に比べて多いです。機能性月経困難症の治療には『ヤーズ』『ルナベル・フリウェルは』のどちらを選択するかは、ご相談ください。